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ホットパーティクル説へのコメント [夜話]

ホットパーティクル説へのコメントです。

(1)ホットパーティクルとは、放射性物質でできた微細粒子もしくは、放射性物質が付着した微細粒子のこと

>そういうのは、多分存在するし、関東まで飛んできてたでしょう。それが降下したから地表が汚染されたんでしょうし、KEKなどでの大気中の放射性物質の濃度の分析結果もあります。


(2)大きさは、髪の毛の直径よりも小さい

>そりゃ、そうでしょう。逆に、髪の毛の直径ほどもあったら目視できるレベルだし。でも、なぜ髪の毛と比較するのか、意図が分からない。身近なものにたとえたのかも知れないけど、そもそも髪の毛の直径なんて一定じゃないし、比較する相手として全く適さない。はっきり粒径の目安を言えばいいのに。


(3)含まれる放射性同位体は、いろいろと可能性が考えられる。セシウムなどのほか、溶融した燃料片が混入していればプルトニウムなどを含む可能性もある

>どういうものかはっきりと分析されていない以上、いろいろ可能性があるとしかいえないのは仕方ない。ただ、KEKなどでの大気中の放射性物質の濃度の分析は感度が最高クラスなので、そこで検知できなかったものが含まれていることは考えにくい。燃料片の混入の可能性も、燃料が溶融し、格納容器が損傷した以上、完全否定はできない。福島第一で中性子線が検出されたこともあることから、むしろ定性的には、どれだけかは炉外に出たと見るべきでしょう。ただし、福島第一原発の敷地内での土壌のPu分析結果でさえ、環境土壌と同程度の濃度レベルであることから、非常に微量であったはず。


(4)微細かつ微量で一般的なGM計数管で探知することは難しい

>程度問題だけど、あまりに微量だとそうかもしれない。バックグラウンドとの分離が難しい。でも、Geシンチレーションカウンタならエネルギースペクトルも分かるので検知できるでしょう。α線や中性子線のみってこともありえないでしょうしね。


(5)エアーフィルターを用いた計測に基づくと、呼吸による吸入に換算して、四月現在で、300~400個/日(福島)、10個/日(東京)、5個/日(シアトル)と推算されている

>これは、いろいろおかしい。まず、計測方法が全く不明。推測するに、フィルターをつけて吸引した後、フィルターに感光フィルムでもつけて、輝点の個数を数えたのか、シンチレーションカウンタで計測かな。ただ、フィルターの仕様は明らかでなく、通過している粒子もあるかもしれないし、逆にフィルター自体の元々のクリアランスレベルによっては、ホットパーティクルでないものも含まれるかも知れない。次に、なぜ最初から呼吸による吸入量に換算して出すのかも分からない。呼吸量なんて年齢や個人差が非常に激しいし、生活の仕方でも大いに変わる。普通なら空気中の密度や濃度を出し、そのあとで、いろいろな仮定を示したうえで推算すべきだと思う。また、なぜ個数で表記するのかもよく分からない。比較的放射能の大きなものもあれば小さなものもあると思うんだけど、それを無視して個数表記することの意味が分からない。やはり、KEKなどのように、○○の同位体が××Bq/cm3とすべきだと思う。最後に有効数字の問題が適切に扱われていないのも非常に気になる。呼吸量や空気中の濃度の不均質性などの多大な不確定性がある以上、せいぜいオーダーの議論しかできないと思うんだけど、10個と5個の差に意味があるかのような表現になっている。このあたりは、「科学が分かってない」という香りを醸し出してしまっている。ちなみに、成人の呼吸量が10~20m3/日くらいらしいので、そこに10個含まれるというならば、大気中の個数密度は1個/m3程度のオーダーということのよう。


(6)金属味がある

>それは気のせいでしょう。どんなスーパー味覚なのか。濃度の高かったセシウムやヨウ素の化合物のリストを眺めても、これといって該当するものが見あたらない気がする。


(7)微量だからと言って安全とは限らない。肺などに付着すると、そのまわりだけが局所的に被曝する可能性があり、その局所が受け取る質量あたり被曝線量(Gy値やSv値)は大きい

>これは、代表体積の取り方を利用したトリック。Gy値は、質量あたり受け取る放射線のエネルギーだし、Sv値は、それに人体用に補正係数をかけたもの。というわけで、基本的には質量あたりのエネルギー量で表されている。この「質量あたり」と言うところがミソ。そもそも、突き詰めて考えると、放射線が組織に当たったとした場合、その衝突地点は、ほぼ点であって、そこの部分の質量はきわめて小さい。もし、そのポイントの質量で放射線から受け取ったエネルギーを割り算したりすれば、無限大に近いGy値やSv値をたたき出すことも可能になる。しかし、そういうミクロの世界に入り込んで行くのではなく、一定のバルクの大きさの平均値(たとえば組織当たり線量)を出して、それで考えましょうというのが、普通のやり方である。そして、それに従ってSv当たりの健康影響なども整理されてきている。従って、代表体積以下の局所だけを取り出した場合は、従来の健康影響への換算係数を使うことはできない。

では、代表体積の取り方は、ミクロな方が良いのか臓器くらいのサイズの方が良いのか。平均的に臓器全体がアタックされる場合に比べて、局所だけのダメージの場合の方が、アポトーシスで臓器全体に影響しないように処理できる確率は高く、健康影響が現れにくいというのは自然だと思う。そういうわけで、代表体積を臓器くらいのサイズに取って健康影響を評価するという普通のやり方のほうが自然で、局所だけ取り出すことを科学的に正当化することは難しいと思う。


(8)(3)とも関連するが、もし、プルトニウムを含んでいる場合には、プルトニウムは微量でも毒性が高い(年間摂取許容量は5×10-8g)ので、危険である。

>それを言うなら、ホットパーティクルの個数ではなくて、質量密度かBq数を計測してもらわなくてはね。やってることと、言ってることが、ちぐはぐな感じ。ちなみに年間摂取許容量相当なら、10-8Bq/cm3程度の濃度にはなるはずなので、適切な機器・方法で計測すれば検出できるはずです。まあ、出ない可能性が高いと思うけど。


というわけで、これまでの大気中の放射能計測結果をひっくり返すとは思えないし、そのほか表し方の問題などもあって、個人的にはあまり信頼できない話だなあと思います。でも、意外に高度な仮説なので、科学者でも信じる人もいるかも知れないなあという印象です。特に(7)のトリックは非常にレベルが高い。学会とかで同じようなミスをしている発表をたまに見かけるくらいなので。あと、微量かゼロかの境目は現実的には証明できないこともあり、ホットパーティクル説は今後も根強く残ると思います。


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コメント 7

tamiya

こんにちは。

(7)についてですが、
「平均的に臓器全体がアタックされる場合に比べて、局所だけのダメージの場合の方が、アポトーシスで臓器全体に影響しないように処理できる確率は高く」
と言えるかどうかがポイントだと思います。

平均的にアタックされた場合はアタックされた箇所でのダメージは小さいので修復が容易だが、狭い範囲が強力にアタックされるとその生体細胞の修復は難しいため、後者の方がダメージが大きいという説を聞いたことがあります。

これは、やはり、誤りなのでしょうか?
まったくの門外漢で判断しかねるのです。
細胞内のミクロの世界で起きていることについて、実証的な研究がありそうな気がするのですが。
by tamiya (2011-07-24 17:46) 

松戸市民

危険を煽る人の特徴だと思います。

先日松戸にいらしたECRRのクリス・バズビーさんもそうだったのですが、彼らは彼らの主張する危険の根拠となる肝心な部分で数字を出さなかったり、他と比較できるような表記を避けたりするんですよね。また、他じゃやらない独自の調査方法(車のフィルターとか)を使ったりもしますね。

ネット上も含めて、危険を過剰にあおる人たちを今ひとつ信用できない理由だったりします。



by 松戸市民 (2011-07-26 17:04) 

水琴

tamiyaさん>

コメントありがとうございます。私も医学は詳しくないのですが、何に注目するのかに依存していると思います。

ミクロの世界では、放射線が当たるか当たらないかの二択が支配的な世界だと思います。一方で、生体というマクロなシステムの世界では、細胞一つ一つの死活ではなく、機能単位で見たときのダメージが重要になってくると思います。

細胞のダメージという意味では、ミクロで集中的にやられたほうがひどいに決まっていると思います。一方で、局所的な細胞群のダメージが、臓器レベルや全身レベルへ影響するのかというと、そこは直接的ではありません。

机上論的には、大体そういうところですが、実際はどうでしょうか。

これまでの放射線の健康影響調査結果も、臓器単位程度を代表体積として整理したときに実際の傾向をよく説明するので、そういう見方を経験的に支持しています。逆に、ホットパーティクルの影響が主であると仮定すると、既往データをうまく説明できないようです。そのため、学術的には、あまり支持されていません。

とはいえ、データをそろえて適切に分析してサポートする証拠が出れば、まともな学説になる可能性が全くないわけではありません。今のところ、そういう気配が感じられないので、横目で見ながら・・・という感じですね。

by 水琴 (2011-07-27 00:47) 

水琴

松戸市民さん>

コメントありがとうございます。

警戒情報も重要なんですけど、見るからに怪しい感じの情報が飛び交うと、オオカミ少年になってしまいそうで困りますね。

by 水琴 (2011-07-29 00:18) 

あんず

先日ホットパーティクルについてのコメントした者です

正直、難しくてよく理解できませんでしたが(ごめんなさい)、知識のある方には不可解な点や不明な所が見えてくるのですね

この件だけでなく、色々な情報を目にする度に、私の様に何の知識も持たない人は(全て鵜呑みにはしていませんが)不安な気持ちしか残りません。

今回の事故が、また新たな事例となって解ってくる事が多いのでしょうね
by あんず (2011-07-29 11:58) 

水琴

あんず さん>

ホットパーティクル説は、「放射性の微粒子が飛んでいるのではないか?」という根本的な発想の部分は、とても自然だと思います。

ただ、その評価・検証の仕方や、その結果の表現方法に、理系の高等教育を受けたものであればそれはしないだろう・・・と思うような不自然さがあります。

言ってみれば、科学者・技術者が中立性・正確性を保つために従わなければならない基本的な作法・習慣のようなものが、守られていません。

というわけで、「正しいかも知れないし、間違ってるかも知れないし、情報があまり提示されてなくて、よくわかんないなあ。でも、多分基本的な作法や習慣を全然守らないって事は、信頼性低い情報源かな?」という感じなんです。

ところで、業界の作法・習慣というのは、修業時代に師匠や先輩から躾けられるようなもので、その世界に足を踏み入れない限り、いわゆる"専門知識"以上になかなか知り得ないことだと思いますし、なかなか説明も難しいです・・・。やっぱり、わかりづらいですよね・・・m(_ _)m

今回の事故は、これまでの原子力事故とはかなり違う経過を辿っていますし、適切に分析することで、新たに分かってくることも沢山ありそうだと、私も思います。

by 水琴 (2011-08-02 23:00) 

park

水琴さん、初めまして。震災以来このブログを何度も拝見しています。
専門的知識が全くない人間でも理解できるように噛み砕いて説明してくださるので本当に感謝しています。

ただ2つほど疑問、質問があるのですがよろしいでしょうか?

「KEKなどでの大気中の放射性物質の濃度の分析は感度が最高クラスなので、
そこで検知できなかったものが含まれていることは考えにくい。」と反論なさっているのですが、
KEKってつくば市にあるんですよね?
個人的に、同じ県でも(市原の線量が低く柏の線量が高いように)
地域によって土壌汚染度はかなりの差があるように見受けられます。
ですので、つくば市にあるKEKでプルトニウムが観測されなかったと言って
東京や千葉にはプルトニウムはないと言うことは出来ないと思うのですが…
また、プルトニウムについてですが、原発敷地外の大熊町でも発見されたようです。
http://www.town.okuma.fukushima.jp/m/grd_20110525.html
最高値は11.10Bq/㎡とのことです
この値は健康に問題を与えるのでしょうか?
また、プルトニウムの健康基準値(1㎡あたりxBq以下だったら健康に被害はないなど)
というのはあるのでしょうか?

もし時間があれば、お返事宜しくお願いします。
by park (2011-08-08 23:30) 

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